放課後等デイサービスは児童福祉法に基づいて許認可される事業であり、報酬の大部分は、国や自治体からの公金でまかなわれています。行政による後押しを受けるため、なによりも児童が安全に過ごせる居場所を提供するために、人員配置基準が定められています。
今回は、人員配置基準を詳しく解説するとともに、放課後等デイサービスの円滑な運営のための人員配置のポイントを解説します。
目次
1.放課後等デイサービスとは
2.放課後等デイサービスの人員配置基準
3.放課後等デイサービスの従事者に必要な資格、勤務形態
3-1.管理者
3-2.児童発達支援管理責任者(児発管)
3-3.児童指導員または保育士
3-4.看護職員
3-5.機能訓練担当職員
3-6.嘱託医
4.人員配置における注意点
4-1.人員配置基準を満たさない場合、減算の対象となる
4-2.基準以上の十分な人員配置により、加配加算を受けることができる
4-3.放課後等デイサービスの円滑な運営のための人事配置のポイント
5.まとめ
1.放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスとは、障害を持っている児童が放課後や休校日に通うことができる施設です。障害を持っていても自立した生活を送ることができるように、集団または個別のプログラムやイベントなどの活動、他者との関わりを通じた発達支援を行っています。保護者に対しては、子育ての悩み等の相談や、ケアの一時的な代行による保護者の時間の確保といった役割も果たしています。
放課後等デイサービスには、一般的な放課後デイと、重症心身障害児に特化した放課後デイの2種類があります。対象障害児やサービス内容には以下のような違いがあります。
| 一般的な放課後デイ | 重症心身障害児放課後デイ |
全国の事業所数 | 約15,000施設 | 約400施設 |
対象障害児 | 軽度中心 | 重症心身障害児 |
利用定員 | 10名以上 | 5名以上 |
サービス内容 | 創作活動、地域交流 学習支援、集団遊び | 医療的ケア、リハビリ 外出レク |
2.放課後等デイサービスの人員配置基準
放課後等デイサービスの人員配置は、放課後等デイサービスの営業時間帯を通して、児童指導員や保育士などの有資格者が常勤するよう、必要な配置を定めたものです。基準を満たしていないと、改善指導に従わなければなりません。
基本的な基準は以下の通りですが、人員基準は許認可する自治体によって異なるので注意が必要です。
| 一般的な放課後デイ | 重症心身障害児放課後デイ |
管理者 | 1名以上 業務に支障のない範囲で、他の職務との兼務可能 | 1名以上 業務に支障のない範囲で、他の職務との兼務可能 |
児童発達支援管理責任者 | 1名以上 1名以上は専任かつ常勤 | 1名以上を配置 |
児童指導員 または保育士 | 利用人数10名で2名以上 | 1名以上を配置 |
看護職員 | 医療ケアを行う場合は、 その時間帯のみ配置 | 1名以上を配置 |
機能訓練担当職員 | 機能訓練を行う場合は、 その時間帯のみ配置 | 1名以上 機能訓練を行う時間帯のみ配置 |
嘱託医 | 不要 | 1名以上を配置 |
3.放課後等デイサービスの従事者に必要な資格、勤務形態
前項で人員配置基準について紹介しましたが、資格要件や勤務形態の要件も定められています。それぞれの職種について、業務の内容や必要な資格、勤務形態について詳しく紹介していきます。
1.管理者
管理者は、利用者の申し込みに関する調整や職員の管理等、事業所を統括する仕事を行います。常勤要件・資格要件はありません。他の職務との兼任も可能ですが、管理者の業務に支障が出ないよう注意する必要があります。
2.児童発達支援管理責任者(児発管)
児童発達支援管理責任者とは、提供するサービス管理を行う人を指します。具体的には、個別支援計画の作成や、支援サービスに関わる外部の担当者との連携など、サービス提供の全体を管理し、保護者からの相談に対応する業務を行います。
常勤かつ専任である必要がありますが、業務に支障がなければ管理者との兼任も可能です。
また、勤務時間が週32時間を下回ると常勤とはみなされません。ただし、育児などで勤務時間を短縮する必要がある場合には、週30時間の勤務でも常勤とみなされます。
児発管になるには、下記のような業務に従事する人や資格を持った人が、規定の実務経験を経て、「相談支援従事者初任者研修」と「児童発達支援管理者研修」を修了することが必要です。
相談支援業務従事者
直接支援業務従事者(有資格者)
保育士
児童指導員任用資格
社会福祉主事任用資格
精神障害者社会復帰指導員任用資格
介護職員初任者研修(ヘルパー2級)以上
国家資格
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・看護師
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師
視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士
栄養士・管理栄養士
3.児童指導員または保育士
個別支援計画に基づいて、支援サービスの提供を行います。行事や日常生活での手助けを行うことに加え、日々の児童の様子やサービスの実施についての活動記録をつけることも重要な業務です。
重症心身障害児放課後デイの場合は、1名以上の配置で良しとされており、常勤要件はありません。
児童指導員として働くには、児童指導員任用資格が必要です。以下のような資格や経験のある人が、その証明書を提示することで児童指導員任用資格を得ることができます。
社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得している
大学や大学院で、社会心理学・心理学・教育学・社会学のいずれかの専門課程を修了している
幼稚園・小学校・義務教育校・高等学校・中等教育学校のいずれかの教員免許を保有している
児童福祉施設で2年以上(中卒の場合は3年以上)の実務経験がある
4.看護職員
看護職員は、経管栄養や吸引、薬の管理等の医療行為、児童の体調変化の観察や異変時の対応を行います。一般的な放課後デイの場合は、医療ケアを行う必要がある場合のみ配置し、訪問看護師が対応可能な場合は配置の義務はありません。重症心身障害児特化型の場合は、営業時間帯を通じて配置する必要があります。
常任要件はなく、看護職員として働くには、看護師、准看護師、保健師、助産師いずれかの資格が必要となります。
5.機能訓練担当職員
機能訓練担当職員は、機能訓練指導(リハビリテーション)、日常生活動作の確認、個別機能計画作成を行います。
常勤要件はなく、機能訓練を行わない時間帯は配置の義務はありません。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、心理指導担当職員等の資格が必要です。
6.嘱託医
常駐の義務はありませんが、営業時間中は緊急時に対応できる体制をとる必要があります。近隣の医療機関に依頼して確保する場合が多いです。
4.人員配置における注意点
人員配置基準を満たしていない場合、改善指導が入るだけでなく、減算となり利益に影響を及ぼす場合があります。反対に、十分な人員配置により利益を得ることもできます。人員配置を考えたり、スタッフを採用する際に考慮するべき点について紹介します。
1.人員配置基準を満たさない場合、減算の対象となる
放課後等デイサービスの営業時間中に、人員基準を満たしていない状況でサービスを提供すると、報酬の人員欠如減算の対象となります。児童発達支援管理責任者欠如減算、サービス提供職員欠如減算などがあり、人員欠如の程度や期間に応じて、所定単位数から減算される割合が定められています。
2.基準以上の十分な人員配置により、加配加算を受けることができる
人員配置基準で定められた人数以上の従業員を配置することにより、以下のような人員基準加算を受けることができます。これらの加算を受ける際には、基準以上の人数を満たしていることに加え、サービス内容についての判定基準もあるため、確認が必要です。
看護職員加配加算
基準以上の看護職員を配置することで、医療的なケアが必要な児童を受け入れる体制を確保することを評価する加算です。
重症心身障害児特化型の放課後デイで算定できる加算であり、一般的な放課後デイでは、対象外となります。
福祉専門職員配置等加算
児童指導員のうち、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、公認心理士といった福祉の専門職を一定の割合以上配置していることを評価する加算です。
児童指導員等加配加算
基準の人員に加え、「理学療法士等(保育士含む)」、「児童指導員等」、「その他の従業者」を配置し、質の高いサービスの提供を評価する加算です。
特別支援加算
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理指導担当職員などの専門職を配置し、機能訓練や心理指導を行っていることを評価する加算です。
ただし、児童指導員加配加算において「理学療法士等を配置する場合」の算定を行っている場合は、特別支援加算と重複しての算定ができません。また、重症心身障害児特化型の場合は、機能訓練担当職員と職種が重複する場合には算定できません。
3.放課後等デイサービスの円滑な運営のための人事配置のポイント
スタッフや家族の体調不良により急な欠勤となることも考えられるため、減算とならないよう、余裕を持った体制を整えることが必要です。経済的な面も考慮すると、加算を意識した、資格を考慮した採用も行う必要があります。
また、スタッフの入れ替わりが多いと児童や保護者の信頼を失うことに繋がります。スタッフが心身ともに健康で、よりよいサービスを提供できるような、長く働き続けられる環境づくりが大切です。
まとめ
放課後等デイサービスの従事者には、資格や勤務形態などの人員配置基準が定められています。基準に基づいた減算や加算といった制度もあり、事業の運営にも大きく関わっていきます。オーナーにとって、人事管理も重要な仕事であり、特に未経験の方には大きな負担となってしまいます。
フランチャイズ制度を利用して放課後等デイサービスを開業すると、スタッフ採用や開業後の労働管理といったサポートを受けることができるので、ぜひ検討してみてください。
Comments